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マウスにおける免疫機能および脂質代謝に対するザクロ種子油の食 餌効果

要旨

目的:著者らは、高濃度のプニカ酸( 9c,11t,13c- オクタデカトリエン酸)を含有するザクロ種子油( PSO )を食餌に入れた場合の、 C57BL/6N マウスにおける免疫機能および脂質代謝に対する影響を評価した。

方法:マウスは 0 %、 0.12 %または 1.2 %の PSO を含む実験食餌が 3 週間与えられた。

結果:実験グループの成長パターンに有意な差異は見られなかった。 0.12 %または 1.2 %の PSO を含む食餌を与えたマウスから分離された脾細胞は、フォルボル 12- ミリステート 13- アセテートおよびカルシウムイオノフォア A23187 を添加または非添による刺激の有無に関わらず、大量の免疫グロブリン G および M を産生したが、免疫グロブリン A は産生しなかった。食餌に含まれる PSO は脾細胞における B 細胞または CD4- ポジティブか CD8- ポジティブな T 細胞の割合に影響を与えなかった。脾細胞からのインターロイキン -4 、インターフェロン - ?、および腫瘍壊死因子 - ?の産生レベルは、すべての食餌グループで同等だった。血清の脂質パラメータの分析によると、 PSO グループにおいて、血清トリアシルグリセロールとリン脂質のレベルは著しい上昇を示したが、総コレステロールでは上昇が見られなかった。血清、肝臓、精巣上体および腎周の脂肪のプニカ酸レベルは食餌中の PSO レベルの増加に伴って増加した。しかし、どの食餌グループからも脾細胞ではプニカ酸が検出されなかった。興味深いことに、 0.12 %または 1.2 %の PSO を含む食餌が与えられたマウスの血清、肝臓、および脂肪組織中から、 9c,1 t- 共役リノレン酸が検出された。

結論:これらの結果は、 PSO in vivo での B 細胞機能を高める可能性を示唆している c2006 Elsevier Inc.  許可を受けて転載。

 

キーワード:ザクロ種子油、プニカ酸、免疫グロブリン、マウス、サイトカイン

 

はじめに

 食物に含まれる脂肪が様々な免疫機能を操作することを示唆するデータが蓄積されている。例えば、食物に含まれる脂肪レベルまたは? -6/ ? -3 多重不飽和脂肪酸バランスといった食物脂肪の質の調節が、リンパ球の機能に強く影響する[1、 2 ]。食品組成における食用脂肪酸および微量な脂肪酸のバランスも免疫機能に影響を与えるものと予想される。共役リノレン酸( CLA )は、オクタデカジエン酸の位置および構造異性体の総称である。 CLA は食物に非常に低量に含まれているだけで、様々な有益な生理学的機能を発揮することが報告されている。著者らが以前に行った研究によれば、ラットおよびマウスの脾細胞において、 CLA は免疫グロブリン( Ig )の産生を強く促進し、様々なサイトカインの産生を著しく調節することが明らかになった[ 3 ? 6 ]。これらに加え、 10trans,12cis-CLA Ig の産生を促進したが、一方 9cis,11trans-CLA は腫瘍壊死因子 - ?( TNF- ?)およびインターフェロン - ?( IFN- ?)の産生を促進した。これらの知見は、食物中の共役多重不飽和脂肪酸は免疫調節効果によって、効力のある有益な生理学的機能を発揮することを示唆するものである。さらに、ザクロ種子油( PSO )は、プニカ酸といわれている 9cis,11trans,13trans- 共役リノレン酸( CLN )を多量に含んでいる。様々な CLNs が移植された癌細胞の成長を阻害すること、あるいは in vitro で癌細胞殺傷活性を発揮することが明らかになっている[ 7 ? 9 ]。 CLN の免疫調節機能を示唆する証拠はまだ報告されていない。著者らは、マウスの脾細胞の機能に対する食物中の PSO の影響について調べた。

 

材料と方法

 ザクロ種子油(脂肪酸組成を表 1 に示す)は横浜市にあるプランテク研究所( Plantech Research Institute )で調製され、大豆油は Sigma 社(米国、ミズーリ州、セントルイス)から購入された。生後 4 週間のオスの C57BL/ N マウス( n=24 、ジャパン CLEA 社、東京都)は、到着後 1 週間、精製されていない市販のペレット食餌と水をが意に与えられた。順化後、マウスは 8 匹ずつ 3 グループに分けられた。マウスは九州大学バイオトロン研究所(福岡市)において、 12 時間明期/ 12 時間暗期サイクルのもと(午前 8 時から午後 8 時までの明期)空調設備のある室内で(特殊な滅菌状況下で、室温 20 ℃、湿度 60 %)飼育された。本実験は、九州大学農学部および大学院農学研究科の動物実験指針、および日本政府の法律(第 105 号)と通告(第 6 号)にしたがって実施された。表 1 に示すように、実験に用いられた食餌は AIN-93G 標準にしたがって製造され[ 10 ]、 0 %、 0.12 %、または 1.2 %の PSO を含有するものであった。食餌実験後、マウスはジエチルエーテルによる軽い麻酔下で腹部大動脈からの除血を行って殺した。各組織は摘出直後に計量され、脾臓からリンパ球が分離された。

 脾臓リンパ球の調製は以前に記述した方法[ 4 ]にしたがって行われ、マクロファージや単核細胞といった粘着細胞の除去は行われなかった。簡潔に、脾臓から調整された細胞懸濁液は RPMI-1640 培養液(ニッスイ、東京都)で 3 回洗浄された。次に、 5mL の細胞懸濁液がリンパ破壊マウス Lympholyte-mouse Cedarlane 社、ホーンビイ、カナダ)に接種され、リンパ球が単離されて、もう一度 RPMI-1640 培養液で 3 回洗浄された。リンパ球は、 8nM のフォルボル 12- ミリステート 13- アセテート( PMA )および 150nM のカルシウムイノホア A23187 を添加または無添加の条件下で、 10 %のウシ胎児血清( Intergen 社、パーチェース、ニューヨーク州、米国)を含む RPMI-1640 培地で、 2.5 × 10 6 細胞/m L の濃度で培養され、ついで 37 ℃で 24 時間培養された。

 培養された倍地中の Ig 濃度の測定は、サンドウィッチ酵素結合免疫吸着剤検定で行われた。それぞれの Ig と凝結させるために、ウサギの抗マウス IgA Zymed 社、サンフランシスコ、カリフォルニア州、米国)、ヤギの抗マウス IgG H+L Zymed 社)、およびウサギの抗マウス IgM (? - 鎖特異的; Zymed 社)が使用された。これらの抗体は 10 %の Block Ace (大日本薬品株式会社、大阪)を用いて希釈され、 96- ウェルプレートに分注後、 37 ℃で 1 時間培養された。 10 %の Block Ace IgE に対しては 25 %の Block Ace 300 ? L をそれぞれに加え、一晩4℃で培養し、次にサンプル( 50 ? L )をそれぞれのウェルに加えて 37 ℃に 1 時間置かれた。各ウェルはそれぞれの Ig を検出するためにペルオキシダーゼ( POD )結合のヤギの抗マウス IgA Zymed 社)、 POD 結合のヤギの抗マウス IgG H+L Zymed 社)、または POD 結合のウサギの抗マウス IgM Zymed 社)の溶液で処理され、 37 ℃で 1 時間( IgE については 4 ℃で 20 分)培養された。各処理段階の合間に、プレートは 0.05 %のポリエチレンソルビタンモノラウレート( Nakalai Tesque 社、京都)を含むリン酸緩衝溶液ですすぎ洗いされた。次に 0.2mol/L のクエン酸緩衝溶液に入れた 1.8mmol/L の過酸化水素、水、および 11.7mmol/L 2,2’ アジノビス( 3- エチノベンゾチアゾリンスルホン酸)の 10 9 1 混合液を加えた。着色反応を停止するために 160nmol/L のシュウ酸を加えた後、 415nm での吸光度を測定した。

  PMA および A23187 を加えて培養された脾臓リンパ球の上澄み液から得られたインターロイキン -4 IL-4 )、 TNF- ?、および IFN- ?のレベルを測定した。 TNF- ?および IFN- ?のレベルは以前に報告した方法[ 4 ]と同様にサンドウィッチ酵素結合免疫吸着剤検定によって測定された。簡単に言うと、ウサギの抗マウス/ラット IFN- ?( BioSource 社)、抗マウス TNF- ?( Endogen, Woburn 、サニーヴェール、マサチューセッツ州、米国)、または抗マウス IL-4 BD Bioscience 社、フランクリンレイクス、ニュージャージー州、米国)を用いて、これらのサイトカインを 37 ℃で1時間凝結させた( IL-4 については4℃で一晩凝結させた)。次に、 25 %の Block Ace 37 ℃で 1 時間用いて遮断を行った。次の段階では、各ウェルを 50 ? L の適切な培養液上澄みを用いて 37 ℃で 2 時間処理し、次にプレートをビオチニレートされた抗マウス IFN- ?( Genzyme 社、ケンブリッジ、マサチューセッツ州、米国; 1 500 希釈)、ビオチニレートされた抗マウス/ラット TNF- ?( Genzyme 社;1: 250 希釈)、またはビオチニレートされた抗マウス/ラット IL-4 BD Bioscience 社)の希釈液を用いて 37 ℃で 1 時間処理した。 10 %の Block Ace で希釈したストレプトタビジン接合 POD Zymed 社)を各ウェルに加え、 37 ℃で 1 時間培養した。プレートは各段階で洗浄され、 Ig 測定プロトコル用に記述された方法にしたがって着色反応が行われた。着色段階は、 Ig の定量のために記述された方法と同じやり方で行われた。

  CD45R B 細胞マーカー)、 CD4 、および CD8 T 細胞の亜集団のマーカー)といった細胞表面表現は、以前に報告した方法[ 4 ]と同様に、フローサイトメトリーによって分析した。脾臓からリンパ球を分離した後、細胞は RPMI-1640 培地で 3 回洗浄し、 3 %のウシの血清アルブミンを含むリン酸緩衝溶液を用いて 37 ℃で 1 時間処理した。細胞は 2 グループに分け(各グループ 1.0 × 10 6 細胞)、一方のグループはラットのフィコエリスリン接合モノクローナル抗マウス CD45R (クローン RA3-6B2 Caltag Laboratories 社、バーリンガム、カリフォルニア州、米国)に暴露させ、もう一方はフルオレセインイソチオシアネート - 接合モノクローナル抗マウス CD4 (クローン CT-CD4 Caltag Laboratories 社)とラットのフィコエリスリン接合モノクローナル抗マウス CD8 b(クローン CT-CD8b Caltag Laboratories 社)で二重染色した。すべての抗体反応は氷上で 1 時間行い、抗体処理後、細胞はリン酸緩衝溶液で 3 回洗浄した。サンプルはフローサイトメトリー( FACSCalibur Becton Dickinson 社、サニーヴェール、カリフォルニア州、米国)を行い、 CD45R- CD4- および CD8- ポジティブなリンパ球の割合を明らかにするために、 10 4 個の細胞を分析した。

 血清のトリアシルグリセロール( TG )、総コレステロール、およびリン脂質( PLs )を市販のキット(和光純薬、大阪)を用いて製造元のプロトコルにしたがって測定した。

 クロロフォルム/メタノール混合液(体積比 2 1 )を用いて Folch ら[ 11 ]が記述した方法にしたがって総脂質を抽出した。抽出後、以前に報告した方法[ 12 ]にしたがってメチル基転移を行った。簡単にいうと、総脂質を硫酸/メタノール/ジメチルスルホキシド(体積比 1 115 115 )で溶解し、 80 ℃で 2 時間静置した。メチル化された脂肪酸をヘキサンを用いて再抽出し、 Supelcowax-10 カラム( 0.32mm × 60m 、フィルムの厚さ 0.25 ?m; Supelco Inc. 、ベレフォンテ、ペンシルバニア州、米国)に装着させてガス液体クロマトグラフィー( GC-14B 、島津製作所、京都市)で脂肪酸組成解析を行った。カラム温度は 220 ℃に保ち、検出器と注入器の温度は 250 ℃に設定した。

 有意さを評価するために、分散分析およびフィッシャーの保護最小有意差( Protected Least Significant Difference PLSD )試験によってデータ解析を行った。すべての実験データは平均値±標準誤差で表し、同じ上付文字を共有していない値は P<0.05 で有意な差があることを意味する。

 

結果

 表 2 にマウスの成長パラメータに対する PSO の影響を示す。すべての食餌グループ間で体重または組織重量に有意な差は見られなかった。実験期間中、食餌グループ間における食物摂取量に有意な差は見られなかった(表にデータを示していない)。

 表 3 に脾臓リンパ球による Ig 産生に対する食餌 PSO の影響を示す。食餌に含まれる PSO は、 PMA および A23187 の刺激に関わらず、どの食餌グループでも IgA 産生に影響を与えなかった。脾細胞における IgM 産生が PMA および A23187 によって著しく調節されることを示唆する結果が得られた(分散分析)。分散分析の結果は、食餌が IgG および IgM の産生に著しい影響を与えることを示し、また post hoc 試験は食餌中の PSO がこれらの Ig クラスの産生を著しく促進することを示した。脾細胞による IgG および IgM 産生のレベルは、 PSO 0.12 %および 1.2 %含有するグループ間で同様だった。すべての Ig クラスにおいて、食餌と刺激( PMA プラス A23187 )の相互作用に有意な差は見られなかった。食餌を与えて 1 週間後、 2 週間後、 3 週間後に採取した血清を各食餌グループで比較したところ、血清中の IgA IgG および IgM レベルはすべて同等だった(データは示していない)。

 サイトカイン産生は、 PMA および A23187 の刺激を与えない情況ではリンパ球からの上澄み培養からはまったく検出されなかった。表 4 PMA および A23187 による刺激を与えた場合の脾臓リンパ球におけるサイトカイン産生に対する食餌中の PSO の効果を示す。食餌中の PSO は、それぞれヘルパー T 細胞のタイプ1( Th1 )およびタイプ 2 Th2 )によって産生されるサイトカインの代表である IL-4 または IFN- ?の産生に影響を与えなかった。加えて、 TNF- ?産生も食餌グループ間で同じだった。脾臓リンパ球集団全体における B 細胞の割合を評価するために、 CD45R+ の割合を測定した。マウス脾細胞における B 細胞の割合はどの食餌グループも同じだった。結果は、食餌中の PSO CD4+ および CD8+ の割合に影響することを示した。食餌グループ間で Cd4 + または CD8 + T 細胞の割合に有意な差は見られなかった(データは示していない)。

 次に、血清の脂質パラメータを代表するものとして、血清 TG 、総コレステロールおよび PL レベルについて評価した(表 5 )。測定したすべての脂質パラメータは PSO 量に比例してわずかに増加した。食餌グループ間で総コレステロールレベルに有意な差は見られなかったが、 PSO を与えたグループの TG および PL レベルは対照グループとは有意に異なっていた。

 表 6 から表 10 まではそれぞれ、肝臓、血清、脂肪組織、および脾細胞における脂肪酸組成を示している。プニカ酸レベルは、 PSO を与えたマウスでは PSO の量に比例して増加した。しかし脾細胞では、 PSO を与えたどのグループからもプニカ酸が検出されなかった。プニカ酸の蓄積は脂肪組織で最も高かった。食餌中の PSO レベルが高くなるにつれて、血清、肝臓、および脂肪組織で 9c,11t-CLA の蓄積が観察された。肝臓および血清では、 9c,11t-CLA レベルはプニカ酸レベルを超えた。本研究では食餌に PSO を加えたどのグループでも脾細胞から 9c,11t-CLA はまったく検出されなかった(表 10 )。

 

考察

  PSO はプニカ酸といわれる 9c,11t,13c- オクタデカデカトリエン酸を 80 %以上含有する(表 1 )。 PSO は化学物質によって引き起こされる発癌を抑制し、抗腫瘍発現性を発揮することが明らかになっている[ 7 ? 9 ]。共役多重不飽和脂肪酸に関する最近の研究で、食物に含まれる CLA はラット、マウス、ニワトリのヒナ、ブタおよびヒトにおける免疫機能を調節することが示唆された[ 3 ? 6 13 ? 17 ]。これらの結果は、食物に含まれる共役脂肪酸が免疫機能に著しく有益な効果を与えることを示唆するものである。しかし、共役トリエン酸の免疫調節機能に関しては情報がほとんど得られていない。著者らは C57BL/6N マウスにおける免疫機能および脂質代謝に対する PSO の影響について調べた。

 本研究では、血清の TG および PL 濃度は対照グループに比べて PSO を与えたグループで顕著に高く、 PSO は脂肪組織の重量に影響を与えなかった。 CLA はマウスの体脂肪および血清の TG レベルを減少させるが、 Koba ら[ 18 ]の最近の研究によれば、ラットでは CLA (共役ジエン酸またはトリエン酸二重結合を有する様々な異性体の混合物)は血清の TG レベルを増加させることが分かった。特に、ニガウリの種子油に含まれる 9c,11t,13c- オクタデカトリエン酸は、? - リノレン酸を豊富に含む亜麻の種子油に比べて血清の TG および総コレステロールレベルを増加させた[ 19 ]。従って、血清の TG レベルはある種の CLNs が経口摂取された場合に増加すると考えられる。

 食物中に含まれる脂肪酸組成の調節によって脾細胞による Ig 産生は加減される[ 20 ? 22 ]。加えて、食物中に含まれる CLA Ig 産生を高める可能性がある[ 3 ? 7 ]。従って、 CLN のような共役二重結合を含む多重不飽和脂肪酸は Ig 産生を高めると予想される。本研究の結果は、食物中に含まれる PSO が脾細胞による IgG および IgM の産生を著しく高めることを示唆した。表 6 から表 10 に示したように、 PSO を含む食餌を与えたマウスの血清、肝臓、および脂肪組織から 9c, 11t-CLA が検出された。食物中に含まれる CLN はラットでは CLA に変わることが、またヒトの結腸癌腫細胞系統である CaCo2 CLN CLA に変えることが示されている[ 23 24 ]。食物中の PSO によって Ig 産生が促進されることと PSO 9c, 11t-CLA に生体変換することの関係はどのようなものなのだろうか?著者らの以前の研究によれば、 9c,11t-CLA ではなく 10t,12c-CLA in vivo における Ig 産生を高める活性異性体であることが明らかになった[ 4 ]。加えて、 PSO を含む食餌を与えたマウスから得た脾細胞中には、プニカ酸も 9c,11t-CLA も検出されなかった。これらの結果は、脾細胞へのプニカ酸または CLA の取込みは Ig 産生の促進に必須ではないことを示唆するものであったが、ガスクロマトグラフィーによる分析では検出できないような、脾細胞内の非常に少量の PSO またはその代謝産物(伸長、不飽和化、または? - 酸化などによって生じる物質)が活性成分であることを否定できない。さらに、プニカ酸から作られる 9c,11t-CLA Ig 産生を促進するための活性異性体ではないと推定される。食物中に含まれる 10t,12c-CLA PSO の効果を比較すると、 10t,12c-CLA IgA の産生を促進したが[ 4 ]、一方、 PSO は促進しなかった(表 3 )。著者らは以前、 10t,12c-CLA はリンパ球集団のバランスを調節することによって Ig 産生を促進することを明らかにしたが[ 6 ]、一方、食物中に含まれる PSO はリンパ球集団のバランスを調節しなかった。したがって、食物中に含まれる PSO による Ig の促進効果は、 10t,12c-CLA とは別なメカニズムによって高められている可能性がある。

 食物中に含まれる脂肪酸組成はまた T 細胞集団のバランスも調節し[ 25 ]、著者らが以前に行った研究によれば、食物中に含まれる 10t,12c-CLA は、マウスの脾細胞における Ig 産生を促進することによって、 B 細胞集団を増加させることが明らかになった[ 4 ]。脾臓リンパ球における B 細胞比率および T 細胞亜集団に対する PSO の影響を調べるために、著者らはリンパ球特異的な表面マーカーである CD45R B 細胞)、 CD4 Th 細胞)、および CD8 (キラー T 細胞)を測定した。 PSO B 細胞または T 細胞亜集団の割合に影響を与えなかった。加えて、 Th 細胞はおおまかに Th1 細胞と Th2 細胞とに分類されたが、この分類は T 細胞から分泌されるサイトカインのタイプとして特徴付けることができた。代表的なサイトカインとして、 IL-2 IL-12 および IFN- ?は Th1 細胞から産生され、一方、 IL-4 IL-5 IL-10 および IL-13 Th2 細胞から産生される。著者らは脾細胞の IL-4 IFN- ?および TNF- ?の産生性を測定した。その結果、 PSO はこれらのサイトカインのいずれの産生にも影響を与えないことが明らかとなり、食物中に含まれる PSO はマウスの脾細胞における Th1/Th2 バランスを調節しないことが示唆された。以前に行った研究結果によれば、食物中に含まれる共役二重結合を含有しないオクタデカトリエン酸は T 細胞集団のバランス( CD4 + CD8 + または Th1 Th2 )を調節しないことが明らかになっている[ 26 ]。これらを考え合わせると、食物中に含まれる PSO B- または T- リンパ球集団のバランスに影響することはなく、食物中の PSO による Ig 産生の促進は脾細胞中の B 細胞と T 細胞の集団バランスの調節によっては説明できないことが示唆された。

 食物中の CLN は脂質代謝を調節し、本研究の結果は食物中に含まれる PSO はマウス脾細胞による Ig 産生を促進することを示した。著者らが知る限りでは、本研究は食物中に含まれる PSO の免疫機能について記述した初めての報告であり、 in vivo での PSO の詳細な作用メカニズム、特にその代謝効果について明らかにするために、さらに研究を行う必要がある。

 

 

 


1   ザクロ種子油の脂肪酸組成

16:0

18:0

18:1 ( ? -9)

18:1 ( ? -7)

18:2 ( ? -6)

18:3 (プニカ酸)

20:0

20:1

3.1

1.8

5.4

0.4

5.3

83.1

0.4

0.5

 

 

2    PSO 0 %、 0.12 %、および 1.2 %含む食餌を 3 週間与えた C57BL/6N マウスの体重と組織重量 *

 

対照

0.12% PSO

1.2% PSO

体重( g

 実験開始時

 実験終了時

組織重量(体重%)

 肝臓

 腎臓

 心臓

 肺

 脾臓

腎周脂肪

精巣上体脂肪

 

21.4 ± 0.9

22.6 ± 0.9

 

0.996 ± 0.086

0.305 ± 0.009

0.119 ± 0.012

0.150 ± 0.006

0.077 ± 0.019

0.156 ± 0.055

0.490 ± 0.066

 

21.6 ± 0.9

23.6 ± 0.5

 

0.993 ± 0.050

0.319 ± 0.039

0.111 ± 0.008

0.147 ± 0.015

0.088 ± 0.019

0.137 ± 0.020

0.429 ± 0.087

 

21.4 ± 0.9

23.0 ± 1.2

 

0.954 ± 0.088

0.304 ± 0.024

0.108 ± 0.011

0.145 ± 0.009

0.074 ± 0.011

0.159 ± 0.053

0.471 ± 0.030

PSO 、ザクロ種子油

* データはマウス 5 匹における平均値±標準誤差で表されている。

 


3    PSO 0 %、 0.12 %、および 1.2 %含む食餌を 3 週間与えたマウスの脾細胞における免疫グロブリンの産生 *

Ig (ng/mL)

対照

0.12% PSO

1.2% PSO

PMA+A23187(-)

  IgA

  IgG

  IgM

PMA+A23187(+)

  IgA

  IgG