| 「百寿者(ひゃくじゅしゃ)になろう」抜粋集 |
| ■ (58) 活性酸素は怖くない |
| ■ 運動と活性酸素 激しい運動は、からだ全体の酸素消費量を10〜15倍に、活動筋への酸素流入量は 約100倍に増大させます。そのため、体内の活性酸素発生が増加することが明らか にされています。その限りでは『運動は寿命を延ばすのか』の章で紹介した加藤邦彦氏 の「運動は活性酸素という毒を発生させ、寿命を縮める」という警告は正しいかも しれません。少なくとも、抵抗力が落ち、抗酸化システム能が低下する高齢者には、 (激しい運動という条件で)この警告がある程度あてはまると考えます。若年者には 強い運動をこなす潜在能力がありますが、すべての年齢層に対しては、 『運動は寿命を延ばすのか』の章で示した最大酸素摂取量の50%という運動所要量が 適当です。このやや軽めの運動量(実際は、最大酸素摂取量の50〜55%)が意外にも 体脂肪を最も燃やし、いわゆるトレーニング効果も十分に得られます。この運動負荷量 でも、予想されるとおり活性酸素の発生が高まりますが、その程度は体内に備わって いる抗酸化システムで問題なく対応できるレベルと考えられています。つまり、運動 によるメリットが優位になります。 他方、スポーツ貧血(鉄欠乏性貧血)が、アスリートにしばしばみられます。 活性酸素が万病のもとであるのなら、最も強力な活性酸素であるヒドロキシラジカル をつくる鉄イオンも万病のもとといえるかもしれません。こうして、スポーツ貧血は、 運動によって発生が亢進する活性酸素に対する生体の一種の防御手段ではないか、 と筆者は考えています。たとえば、女性のほうが長寿なのは、男性よりも体内鉄 貯蔵量が少ないため(成人男性4.05g、成人女性2.75g)、がんの進行は鉄の貯蔵量 が多い人ほど早い、など鉄が生体にとって両刃の刃であることを示す報告が数多く なされています。大切なことは、鉄は酸素運搬機能など生体にとって必要不可欠な 微量金属ですので、そのマイナス面を考慮して、明らかに不足している場合のみ サプリメントなどで補うことです。月経や妊娠で鉄欠乏に宿命的になりやすい女性や 成長期の子ども、あるいはアスリートもその対象になる可能性があります。一方、 成人男性が鉄欠乏に陥ることは通常まれであり、サプリメントで毎日鉄を補給して いる人は、過剰状態をつくって自ら百寿の道を閉ざしているようにみえます。 その証拠に、最近、米国科学アカデミーは、鉄の一日所要量を、成人女性は 15mgから18mgに引き上げましたが、逆に、成人男性は10mgから8mgに引き下げました (日本は、それぞれ12.10mg)。ちなみに、 米国では、自然のサプリメントてして、プルーンが推奨されています (非ヘム鉄にもかかわらず、ビタミンCと有機酸の存在で吸収率が高い)。 |
| 【百寿者になろう】より抜粋(著者の了解済み) 著者 杏林大学医学部教授 大野秀樹 定価1,260円(税込) |