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「百寿者(ひゃくじゅしゃ)になろう」抜粋集


■ (57) 活性酸素は怖くない

 
■ 老化と活性酸素

 1956年、米国のHarman,D.が提唱して以来(J.Gerontol.11巻3号)、活性酸素が
老化の有力な原因であることは、多くの研究者によって指摘されてきました。
各動物種におけるSODの基礎代謝あたりの活性と最長寿命の間にきれいな比例関係
が認められた事実が、活性酸素に対する防衛機構に優れていることが長寿、つまり
老化防止に有効であることを示唆しています。人では、偶発的発がんを2倍にするの
にするのに必要な放射線量は約0.2グレイ(10の11乗ヒドロキシラジカル/g/日に相当)
といわれています(『活性酸素と老化制御』井上正康著、共立出版)。
 ヒドロキシラジカルはDNAを攻撃して遺伝子変異を惹起する代表的な活性酸素です。
一方、人の組織が1日に呼吸する酸素量は2×10の20乗分子/gであり、既述のとおり、
その約2%が活性酸素に変換されています。この変換量は偶発的倍化線量の実に
約2千万倍にも相当します。もし、人に抗酸化防御システムがなければ、数分で
がんが発生してしまいます。
 長い人生では不可逆的な遺伝子変異が起こり。臨床的な発がんにいたります。
これが高齢者にがんが急増する理由であり、発がんに関与する遺伝子以外の他の
多くの機能を制御する遺伝子も傷害され、これらが加齢性に顕在化してくる現象
が老化です。たとえば、老化色素・リポフスチンと呼ばれる黄褐色顆粒が加齢
とともに心筋、神経細胞などにたまってきて、細胞の機能低下を生じさせます。
これは、細胞内の脂質が活性酸素によって過酸化反応を受けた結果です。

■ 疾患と活性酸素

 活性酸素は、酸素を利用している生体現象のあらゆる相に存在しているので、
ほぼすべての疾患に活性酸素が関与しているといっても過言ではありません。
たとえば、活性酸素がその病態に深くかかわっており、予備軍も含めて約1,620万人
の患者が存在するといわれる糖尿病は、まさしく国民病といっても過言ではありません
が、その大部分がインスリン治療を必要としない2型糖尿病であり、運動、栄養などの
生活療法に加えて、経口血糖降下剤の服用が重要になります。
 筆者らは、最近、グリミクロン(一般名グソクラジド、大日本製薬株式会社)という
経口治療薬が活性酸素の発生を強く抑えることを見出し、従来の治療薬と比較して、
一石二鳥の効果が望める可能性を示唆しました(「Biochem,Biophys.Res.Commun」
303巻1号、Kimoto,Kら著)。このように、食品ばかりでなく、薬の開発の面でも抗酸化
ストレス効果も念頭に置くようになりそうです。


【百寿者になろう】より抜粋(著者の了解済み)
 著者 杏林大学医学部教授 大野秀樹
 定価1,260円(税込)


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