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「百寿者(ひゃくじゅしゃ)になろう」抜粋集


■ (53) 百寿は遺伝子だけでは決まらない

  ■ 生活習慣病と遺伝子

 糖尿病が、百寿に到達するのを妨害する強い規制因子であるとすでに述べました。
糖尿病や高血圧、がん、肥満、高脂血症などの生活習慣病は、多くの遺伝的因子に
生活習慣を代表とする種々の環境因子が介入した結果生じる疾患です。異常
インスリン血症に伴う糖尿病、家族性高コレステロール血症などの異常遺伝子による
疾患は必ず発病し、治療が必要になりますが、幸いなことに、生活習慣病にかかわる
多くの遺伝子は決定的因子とはならず、異常が存在しても必ずしも発病せず、
そのため生活習慣の改善効果が大いに期待されます。まさに、本書のテーマである
運動・栄養・休養効果です。
 例として、高血圧について少し触れます。高血圧症も多因子疾患であり、その中でも
特に影響の大きい数個の遺伝子(主効果遺伝子)によって、収縮期血圧が最大20mmHg
ほど上昇すると推測されています。一方、遺伝素因の高血圧発症に占める割合は
3〜7割程度です(「綜合臨牀」48巻1号、勝谷友宏ら著)。主効果遺伝子の有力候補である
アンギオテンシノーゲンのMet235Thr多型(235番目のアミノ酸がメチオニンからトレオニン
に変異したもの)のTアリル(対立遺伝子)が日本人・黒人に多く、血圧を上昇させることが
示されています。このTアリルは、ナトリウムと水分の貯留に有利な働きをもち、食塩を
多く含む動物性食品を主に摂取してきた白人に少ないことから、人類のルーツを辿るツール
としても注目を浴びています。減塩食キャンペーンの根拠の一つがここにあります。
 人類のルーツといえば、第3、4章で紹介した牛乳を苦手とする日本人が少なくありません。
これは、日本人の小腸ラクターゼ活性が非常に低いので乳糖を消化できないためです。
白人は、ラビ農耕のはじまるはるか以前から家畜と共存し、その乳を飲んでいたため、大人
になっても大量の牛乳が飲めるように小腸のラクターゼが発現されています。このように、
遺伝子には、個人差ばかりでなく、大きな人類差・民族差もみられます。

【百寿者になろう】より抜粋(著者の了解済み)
 著者 杏林大学医学部教授 大野秀樹
 定価1,260円(税込)


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